2011年10月4日火曜日

熱の入った外国の会議で発言していくには 〜後編

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「国際環境の会議でなぜ発言できないか 〜現状分析」に戻る
「熱の入った外国の会議で発言していくには 〜前編」に戻る


「外国での英語における、色々な国の人が集まっている発言が盛んな会議において、日本人がしっかりと発言をし、会議に貢献し、必要においては会議を円滑にリードする」

一行で書く事ができるが、これがなかなか我々日本人にはハードルが高いのは、正に自分の実体験である。これは自分の仕事においてでも、どんなビジネスの交渉においてでも、多種の国籍の人が協力をして、なにかを成し遂げようとする場においては、日本人が直面し、苦労する場面であると思う。今以上にこれからの時代、どんどんとこのような状況が増え、きっちりとディベートできなくてはならなくなってくると思う。

熱の入った外国の会議で発言していくには 〜前編のエントリーを書いてからずいぶんと経ったが、最近ようやく発言が盛んなシビアなミーティングで思う様に発言ができるようになってきた。ここ数年でさらに気づいた事を書いてみたい。

海外でのミーティングに英語で参加すると、外国人に比べ我々日本人がなかなか思う様に発言できないということがよくある。(語学学校に通っている学生の方は、ディベートのクラスなどで似たような経験をしたことがあるかもしれない。自分が高校生の頃、英語の語学学校に一時期通っていたときに、ディベートのクラスの面子はたしか、フランス、ロシア、中国、日本といった具合で、当然みな同じクラスで英語を学んでいる人々なので英会話の経験はみな似た感じのはずなのに、自分を含め日本人があまり発言できていなかったことを鮮明に覚えている)。特に組織のリーダー達が集まるミーティングでは、みな発言の仕方がさらにうまいため、余計に発言が難しくなる。英語の会議に参加して、仮に日常会話ができる人でも、なかなか会議のディベートに参加できないという経験をした事がある人は多いのではないだろうか?

大事なミーティングで積極的に発言してくる外国人に押されずに、きちんと英語で自分の考えを発言し、ディベートできることは多くのビジネスマンやリーダーにとって大事なことである。もちろん英会話がきちんとできる事、いろいろなところで書いているArticulationがうまい事などが欠かせない。しかし、それだけでは満足に発言できないのは自分も経験済みである。

この発言しにくい理由は国際環境での会議はどんな感じか 〜状況説明国際環境の会議でなぜ発言できないか 〜現状分析に書いたので、今回はそこから実際にどうやったら発言ができるようになるかをさらに考えてみたい。

前回のエントリーでは、ラジオやテレビ番組のトークのディスカッションを聞きながら、こっちの文化での発言のタイミングを覚えるやり方を書いた。これはもちろん有効であるし、自分も取り入れていたのだが、もう少し効果的な方法を思いついたので紹介する。できればラジオとテレビの方法と併用するのが良いだろう。

ミーティングに参加したら、こんなことをしてみるのである。

会議中にだれかが発言をしているとする。そこで、次の人が誰か発言すると仮定したときに、その発言はいつ起きるかを想像してみるのである。いまの発言者の話の真ん中ぐらいのときに、「この辺で誰か発言するかな?」と考えてみる。もちろん、これはタイミングが早すぎるので、当然だれも発言しない。話が少しずつ収束して来ているあたりで、「ここか?」と想像する。おそらくここでも誰も発言しないだろう。つまりここでも少々早すぎる。そして、そうこうしているうちに誰かが次の発言を始めてしまう。要はこの時点でタイミングをミスったわけである。

やる事としてはこれだけである。実際のミーティングに参加した際に、現在行なわれている発言に対して、次の発言者のタイミングを上の様に予測してみるのである。ラジオやテレビでやるのと似ているが、実際に目の前で行なわれている、自分がいずれ発言を思う様にしたい場でこれをやると、より実践的で効果的である。そして、実際にまだ発言をするわけではないので、試みるためのハードルは低い。

この欧米社会でのミーティングにおける発言のタイミングを、日本の文化で育っている我々は探さなくてはいけないという事を、まず意識する事が大事であると思う。探す事を頭にさえ入れれば、聴講者としてでもミーティングに参加し、上のことを続ければ、この外国人のミーティングにおける発言のタイミングは見つかる様になる。

目標は、「ここだろう」と想像したタイミングで実際に次の人が発言をすることである。そして、このタイミングが意識して見つかる様になってきたら、次はそれを体に覚えさせる事である。意識せずとも、次の発言者の話し始めのタイミングが感覚で分かる様になるのが最終目標である。

実際に、続けていればそのうち感覚的に「あ、ここで次の発言はくるな」ということがかなり正確に分かる様になる。面白い事に、この外国人の発言のタイミングは想像以上にブレが無い。実はここが大事で、大体このあたりであろう、ではなく、「ここだ」というタイミングがきちんとあるのである。わかってくると、「あ、いまドンピシャのタイミングあそこだったな。あのタイミングならスムーズに発言できたな。でもだれも発言しなかったな。」といったことが分かる様になる。

外国人のリーダー達は、みなこれを既に感覚的に体得していると思った方が良い。これは欧米文化でのコミュニケーションの経験の差であろう。特に外国で日本人がリーダー職を目指す場合は、このミーティングの発言のタイミングを自然と読める様になることはかなり重要だと思う。

そして、頑張ってこのタイミングが分かる様になれば、色々なことができる様になる。

まず、通常の発言は、感覚的にこのタイミングが分かる様になればなにも難しい事は無い。タイミングさえ正確に読めていれば、普通に発言すればよい。

次に、このタイミングでも誰かと発言がかち合う事がある。ミーティングのヒートアップ具合と参加者の面子にもよるが、このタイミングでもほぼ100%だれかと発言がかぶるミーティングも結構ある。逆に言うと、このタイミングに慣れていない人がこの種のミーティングに参加すると、全く発言ができないのは想像できると思う。

このような発言が盛んなミーティングにおいては、タイミングさえきっちり読める様になっていれば、発言をするためには通常よりも少し声を大きくし、ほんの一瞬("just a hair"という)だけこのドンピシャのタイミングより早く発言をし、通常よりも自信ありげに、あたかも同じタイミングで誰かが発言しても引き下がりませんよ、といった感じで発言をする。(ただし、このやり方はこのようなシビアなタイミングのミーティングの時のみに限定した方が良い。通常のミーティングでやると、これも失礼になってしまう。)

ただし大事なのは、このほんの一瞬を早めにしすぎない事である。これを早くしすぎると、力強く発言しているので、この場合は前の発言者が発言をやめてくれることもある。これはいわゆる"Talk over someone"といって、発言者のことを無視して自分の話を始めるという行為なので、ここの文化でもやってはいけない。(ちなみにこれをやってくる人は残念ながら結構いる。)この早すぎるタイミングを繰り返すと、ミーティングのマナーのなっていない人になってしまうので気をつける必要がある。タイミングと同じで、声の大きさや強調の仕方も、さじ加減は経験で判断するしかない。行きすぎると失礼な発言者になってしまうので、このバランスは早くつかんだ方が良い。

もう一つ、このようなシビアなミーティングに参加しだしたら、一つ頭に入れておいた方が良い事がある。もし同タイミングで、同じような強さで誰かと発言がかぶった場合、この発言は絶対に譲れない、といった時ではない場合は、"go ahead"(どうぞ)と譲る事もした方が良い。これは、この欧米文化での発言のタイミングを意識しだし、特に発言の盛んなミーティングに多く参加していると、「発言負けしない様にやらなくては」と、慣れていない自分は意気込み過ぎて、上のような失礼な発言者に近づいていたときがあった。この辺の感覚が麻痺してくるのである。あるミーティングで他の参加者がこの"go ahead"と自分に言った時に、「ハッ」と自分がやり過ぎていた事に気がついた。この辺のバランスも経験するしかないと思うが、自分のこのミスは参考になるかもしれない。

また、発言者によっては、話が終わりそうな雰囲気のあと、また話がもっと続く場合もある。(これはタイミングを読む側の問題ではなく、発言者の考えがまとまっていない時などに起こる)。そういうときは、自分が発言を始めていたら、すぐにやめればよいだけである。こういった発言のフライングは、観察してみると良く起きている事がわかる。これはみんながタイミングを読んで発言をしている事の裏付けでもある。

このフライングをした時には、みんなが使うちょっとした技を紹介する。フライングをして、発言を引っ込めた人が、「いまちょっとタイミング読み違えて発言始めちゃったけど、俺が次の発言権予約したぞ」的な雰囲気をかもし出すのである(笑)。たとえば口を半開きにして、人差し指を何かを説明するジェスチャーにしておいて、話しだす予備動作をあからさまに提示する。「フライングしたけど次は俺だから、だれも発言するなよ」といった感じを出すのである。結構多くの人がこれをやっている。これをすると大抵その状況で他の人は発言はしてこない。

しかし逆に、このような少々アグレッシブな発言が必要条件のミーティングもある。

たとえば力強いリーダーたちがいっぱい集まって、そのミーティングに気の知れた会社の上司がいたりして、みんながそのミーティングでの発言において彼に自分をアピールしたいミーティングなど(笑)。この類いのミーティングに行くとまさに発言戦争である。こういったミーティングではみなかなりアグレッシブに発言してくるので(フライングだらけ)、そこでは自分もアグレッシブに発言をせざるを得ないであろう。どれぐらいシビアかと言うと、感覚としては先のフライング後の話しだす予備動作をしている人に対して、さらにそれを平気でみなフライングしてくるぐらいのペースのミーティングである。ちなみに自分は10年ちょいの仕事のなかで、このようなミーティングに出くわしたのは2回だけである。今後増えるのであろうか?ん〜恐ろしい。

または、参加者のなかに失礼な発言者が入っている場合もある。こういったミーティングにできるだけ出くわさない事を願うのだが、実際にこういったのもたまにではあるが存在する。発言すべきでない人が、みんなを"talk over"してミーティングを荒らす場合がある。この場合においても、ミーティングを正しい方向に運ぶために、その人に対してはアグレッシブに発言をせざるを得ない時もある。

これら全てのケースにおいて、なによりも大事なのは、この正確なタイミングをきちんと読める様になる事である。そして、それを体が覚えていることが理想である。なんだか文字で書くといろいろ大変に聞こえるかもしれないが、このタイミングを体が覚えさえすれば、いろいろな対応をするのは比較的簡単である。タイミングの習得には結構時間がかかるので、早い段階から意識する事をおすすめする。

(補足になるが、これらの方法は英語のミーティングに頻繁に参加しないと実行しにくいため、あまりミーティングに参加する機会の無い場合は、ミーティングに参加する機会を増やす必要がある。参考までに自分がやったのは、自分の招かれていないミーティングに参加させてもらうことである。ミーティングのオーガナイザーが知り合いであれば、単純に勉強のために参加させてほしいと聞けば良い。小さな大事なミーティングでなければ聴講者として参加できる物は結構ある。また、大勢の人が参加している誰でも参加して良いミーティングに参加するのも良い。社内向けのプレゼンテーションなどは誰でも参加できるし、大抵は最後にQ&Aセッションがあり、そこでミーティング的な意見の出し合いになる。その気になれば、仕事上ミーティングに参加する機会があまり無い場合も、以外と参加できるミーティングは見つかる。)

日本と欧米における発言のタイミング、形式の違いに進む