2011年12月4日日曜日

ジェントルマンリスト

今までに海外で働く上でGentlemanがどうして大事であると思うか、リーダーシップとどういう関係があると考えるか、自分がいままで見てきて感心したGentlemanである行動の例等は、このブログのいろいろな所で取り上げているテーマである。欧米社会で仕事を初めてもう十年以上になり、Gentlemanshipのことを考え始めてからもずいぶん経つ。その十数年のなか、いくつか気づいた事がある。

まずはこんな経験談から。

以前会社で友達と会話をしていると、少し先に重たいカートを押している女の子が通りかかる。会話しながら頭で「ああ、助けてあげなきゃ」と思っていると、自分の友達が既に動いておりカートを押してあげていた。

ひとつ気づいたのが、ジェントルマンとはその行動ができるできない、するしないではなく、無意識でも周りの人を配慮した行動が習慣的にできる人を指すのだとそのとき思った。

自分はそれまで、ジェントルマンの行動ができる人をまねし、その行為ができれば良いと考えていた。もちろんそういった教育を受けていない自分など日本人にはそれが第一歩であるが、するしないに焦点をおくのは少し違っていたと今は思う。体がとっさに反応するぐらい習慣になっていることが大事であり、意識的にやっているひとでも、これが無意識的にできているかどうかは自身が一番よく分かっている。

そして、ストーリーテリングの体得の話とちょっと似ているが、ジェントルマンの行動を意識して一つ一つやっていく目的は、いずれはそれらを体が覚えて応用が利く様になり、無意識でも上のような行動ができるようになる事であると思う。

ではどこから始めるか。これは自分が10数年前に欲しかったリストである。このリストは、現代の、自分の生活範囲のなかで、ジェントルマンシップが文化に浸透している様々な国から来た人を観察して判断した物である。なので逆にこのリストがおかしい、もしくは甘過ぎ、という生活環境もあるであろう。あくまで一つの参考としてである。

自分の生活環境には年齢で言えば10代後半から、50半ばぐらいまでの年齢層がおり、平均で言うと20前半から40半ばぐらいであろうか。国籍はアメリカ、カナダ、ヨーロッパ全般、アジア、中東、南アメリカ、アフリカ、オーストラリア、と、ハリウッドの映画産業は本当に世界中から人が集まって来ている。

また、エンジニアからアーティスト、人事やマネージメント、経理、ビジネスマン、弁護士、プロデューサー、制作スタッフ、VFX業界はありとあらゆるバックグラウンドのひとが集まって仕事をしている場の為、考えると自分の生活環境での10数年のジェントルマンシップのサンプルは、もしかしたら一般論としてそんなに悪くないのかもしれない。

うんちくはこれくらいにして、Gentlemanshipの身に付いている人から見て取れる基礎事項のリストは:

ドアを誰にでも開ける
*どこかに入る、出るときは自分が最後(エレベーター、知人の家、公衆トイレなど)
*レストランでは奥側の席に子供、女性、お年寄りをリードする
*レストランでは子供、女性、お年寄りに先にオーダーしてもらう
*食事(ドリンクの場合も)はオーダーが全員分がそろうまで手を付けない
*歩道では子供、女性、お年寄りより自分が道路側を歩く
*子供、女性、お年寄りの重たい物をもつ
*子供、女性、お年寄りが自分の目につく範囲でなにか手が必要そうな場合、そこまで行って聞く(これは場合によっては男性に対してもか。。。)
*自分のゲストを人に紹介する
相手のゲストに自分を紹介する
*男友達といる時に、その場に友達の彼女、奥さんがいる時は友達だけと話すのはNG
*自分が座っている所に誰かが自分に会いに来たら立って挨拶をする(特に自分が座って相手に対応する状況の場合。例えば仕事のデスクに座っている時だれかが自分を訪ねて来た場合や、一対一で食事をするとき相手が自分より後から到着し(男女かまわず)、自分が先に座って待っている時など。)
*ちょっと遠くでも車いすやお年寄り、子供を抱えている人がドアをくぐりそうなのが目についたら、今自分のやっている事を中断してそこまで移動してドアを開ける
*社交性がある

ぱっと思いつくのはこれくらいだが、今後もっと思い出したらこのエントリーに付け足していく。

さて、自分がこれを全部習慣でできているかというとそんなわけは無く、日々意識しながらやろうとしている事である。海外に出て来たばかりの人にはもしかしたら参考になるかもしれない。

テーブルマナー、エチケット一般、ジェントルマンシップ、とまざっているかもしれないが、それは区別する必要は無いのではと考える。日常生活の中で目につく事のリストである。

そして重要なのは、このリストに何が欠けているかではなくて、これらを繰り返し意識してやっていくうちに、無意識でも体が反応するぐらい習慣になったときは、それの応用でリストに無いものでも自然とできる様になる事である。

最後につい最近感心したジェントルマンの行動を一つ紹介する。

自分の母親が以前ロサンゼルスに訪ねて来た時である。うちに着いた母親の荷物は一階の駐車場の階段の下に置いてあった。階段は一つで、うちの部屋とお隣さんの部屋は二階にあり、両方の入り口まで上がる階段である。

そして、ちょうど同じ頃、お隣さんのマークが駐車場に到着した。3人は軽く挨拶を交わす。自分と母親は荷物をいくつか二階の部屋まで運び、部屋の奥まで運び終わり残りの荷物を取りに出てくると、なんと残りの荷物が階段の上まで移動してあるのである。

重そうな荷物をみて、マークが階段を上がる際についでに階段上まで持って上がってくれていたのである。ほんの一瞬の出来事でマークは既に隣の家に入っていてその場にはいなかった。ちなみにこの階段は短く、オープンな設計なので、その下から上まで顔見知りのお隣さんが荷物が移動したことにより、それに対して何か不信感を抱く事はないような設定であることを付け足しておく。

そのとき自分は、逆の立場ではマークの母親の荷物がそこに並んでいたとして、それを彼らのいない一瞬で自分が上がるついでに階段の上まで運ぶような行動はできなかっただろうなあと思った。

上のリストのような事が全て習慣になっている人であれば、このような行動が自然とできるのだろうと思った。

この次のGentlemanの読み物は、上のリストを一つ一つもう少し具体的に書いてみたい。ジェントルマンシップを習慣にするためには、リストの行動自体ではなく、その行動をする根底にある理由が大切だと思うのである。


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