2009年2月9日月曜日

なぜアメリカではサービス残業をしてはいけないか? Part.1

先日、会社の若いアメリカ人と残業の話になった。
そしてこの話は、自分が10年前インターンで働い
ていた時に、その時の上司に自分が言われ、覚えた事
でもある。

一言で言うと、

「サービス残業はしてはいけない」

である。

この話は、結構基本的な事で、若い頃の仕事始めに
まず学ぶ事である。

この若くしてサービス残業をする彼の意図は決して悪い
ものではない。仕事始めでいろいろ習得したい、周りに
自分の仕事を認めてほしい、ただで長い時間働こうと
良い成果を挙げたい。すべて責任感のある尊敬できる良い
理由である。

この感覚は、我々日本人の仕事に対する姿勢に似ている
ところがある。ただし、違うのは、これをやるとまず
若いうちに、やってはいけないと上司に指摘されるので
ある。なぜか?

本人がやる気があって、ただ働きでもかまわない、という
のだから、仕事をして何がいけないのだろうか? プロジェ
クトや、会社が得をするのだから、本人が進んでするので
あれば良いのではないか? と思われるかもしれない。

つまり、これはこの残業を気にしない若い彼の為を思って
言っているのであろうか?

もちろんその意味もあるが、実はこのサービス残業をして
はいけない理由はもっと深い。

ここで一つ忘れてはいけないのが、ここの仕事環境は、
サービス残業が基本は無いという環境であるという事である。

大きな仕事で、大人数が関わるプロジェクトにおいて、その
プロジェクトの効率性をきちんと管理する為には、個々の仕事
のパフォーマンス、およびタスクの難易度を正確に把握すること
がとても大事である。そのため、自分の上司に、自分の仕事の
パフォーマンスを正確に伝えるのはその人の責任でもある。

たとえば、こんな例を考えてみよう。あるひとが、仕事の速度
が10段階中7であったとしよう。その人が、なにかの理由で自
分はスピードは10であると言うとする。

本来であれば、ここでスピードが10の人が必要なプロジェクト
であれば、新しくそのタスクの要求に合う人を募集、面接、と
いったことを行なわなくてはいけない。プロジェクトにあった
人事を行なう事は大切なことである。

しかしこの場合は、上記の人が10であるという事を前提に
プロジェクトは進み、新たな面接は行なわれず、彼に10の
スピードを期待され、タスクが与えられる。

そして、時間がたち、締め切りが近づき、どうも仕事が上がって
こない。そして、プロジェクトの責任者が彼のスピードは実は10
ではなく、7であるという結論に達した時は、締め切りが間際で
この時点で新たな面接などを行なう余裕が無いことが多い。すると、
そのため誰か10のスピードの人が他のプロジェクトから緊急に、
めちゃくちゃなスケジュールでかり出され、なんとかその仕事が
あがる。この助っ人のひとと、他のプロジェクトまで影響が
およんでしまうのである。

この例において、もちろん、その10と言ってはいるものの、
実際は7であることを見抜くのも、上司の仕事である。
しかし、自分のスピードを7ではなく、10と伝えていた人
にも責任はある。

さて、ことサービス残業においては、記録の外で行なわれるため、
どれだけその人が見えない所で仕事を上げているかがモニターし
づらい。さらには、このサービス残業が行なわれない事が前提とさ
れている仕事環境では、基本はだれも記録されていない残業は行なわ
れていないと仮定され、だれも疑わない。

つまり、記録外で行なわれている労働時間は、上の仕事の速度の
例の様に、この環境においては自分のパフォーマンスを正確に
プロジェクトに伝えていない事と同意にとられるのである。

そして、記録外の労働時間により、自分のパフォーマンスを
間違って伝えてしまうと、もっと問題は深くなる。それは、その
タスクを上げるのにかかっている時間は、実際にかかっている
時間よりも短く記録されているため、そのタスクの難易度を
プロジェクトが把握しようとすると、難易度を低く見積もって
しまうのである。

その結果、もしこの類のタスクが他の人に与えられた場合、実際の
むずかしさより簡単であると見積もっているので、そのひと、および
そのタスクを見積もった人にも迷惑がかかってしまう。これらは全て、
自分のパフォーマンスを間違って伝えているという事に起因する。
自分のちょっとしたサービス残業が、プロジェクトに対してこのよう
にいろいろと影響を及ぼすのである。

もちろん、長い時間をかけてでも良い仕事を上げたいという
考えは、だれでも通る道である。しかし、プロジェクト管理
のためだけではなく、たとえばプロジェクトの後半、本当に残業
(これは実際に給料が払われる、記録上の残業)が必要な時は
本人も大変になる。記録にのこる残業が必要なキツい時に、
その上にサービス残業をしなくては自分のタスクが上がらなくなる
からである。長時間の上にサービス残業を重ね、結果疲労なども
重なり、効率も通常より下がってしまうことさえもある。
これは本人にも、プロジェクトにもよくない。

こういった理由により、自分の為にも、プロジェクトのためにも、
仕事のパフォーマンスは正確に伝える必要がある。そして記録上の
労働時間しか行なわれていないことが前提のこの環境においては、
サービス残業も自分のパフォーマンスを間違ってプロジェクトに
伝える物として、ここではやってはいけないと注意されるのである。

さて、ここまでは自分の働く環境で、一般的に言われていることで
ある。

次のPart.2では、それを少しアレンジした、自分なりの見方を
考えてみたい。