2014年1月15日水曜日

日本と欧米における発言のタイミング、形式の違い

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会議、交渉、会食/バーでの雑談、学校での授業、プレゼン後の質疑応答、舞台挨拶でのインタビューアーの質問など、複数の人が一つの題材をディスカッションする場合、もしくは数人で一つの質問に答える場合、当然しゃべるタイミングというのが出てくる。

もちろん司会の人が質問を当てる人を指定する場合や、挙手をしないといけないルールのミーティングや授業なら別だが、特に欧米ではしゃべる順番を得るのは自分の責任という方が多い。

詳しくは国際環境での会議のテクニックの方で書いているが、こと日本人は欧米文化においてこのしゃべるタイミングを得るのが苦手である。これは単純に文化的な違いが理由であると思うのだが、欧米で自己主張の強い外国人と仕事、生活をしていくにはこのタイミングに慣れる必要がある。

そして、このタイミングを把握、習得していないと

-会議で発言ができない
-交渉で立場が弱くなる
-友達との雑談に参加で来ない
-学校の授業で発言ができない
-プレゼン後の質疑応答で発言の出番がない
-舞台挨拶で発言ができない

といったことを経験する。おそらく日本育ちの人であればほとんどの人が海外で経験していることであると思う。かく言う自分も10年以上苦労したことである。

我々日本人がこのタイミングをつかめない理由、そしてその向上方法などは国際環境での会議のテクニックを参照してほしいのだが、この苦い経験をイメージするのが意外と難しい。

そこでこの違いを分かりやすく示している例を見つけた。これらを比べることで、欧米と日本における発言のタイミングの違いを具体的にイメージでき、習得の為の手助けになると思う。

まずは欧米の例から:


11:30~、13:10~、15:50~などを見ると分かるのだが、基本的にほとんどの会話がみな前の人が話し終わる前に話し始めている。場合によっては二人が平気で同時に違うことを話していたり、話している人がちょっとでも間を空けると他の人が話し始める。誰かが名指しで質問されていても他の人が話す。

会話が途切れないどころか、色々な発言が重なり合っていて、それでもなぜか会話が進んでいるし、みな言いたいことを伝えられている。ここが実は大事で、この中にもルールがあり、そのルールの中で自分の意見をみなちゃんと発言しているのである。

これが欧米における雑談やヒートアップしたミーティングのイメージで、話のうまい人、自己主張の強い人の集る会議や雑談は多くの場合がこのペースで進む。このなかに日本人が放り込まれると一切発言できないという状況は想像できると思う。

さらにもっと極端な例は:

http://www.youtube.com/watch?v=wuDaI2aYP0U (特に1:00〜あたり)

お互いが似たような役、立場で、共に発言したがるとこんな感じになる。相手が話していようとおかまい無しで話し始める。これはどちらかというと極端な例ではあるが、こんな感じの会話や会議は現実でもよくあるし、特にバーなどでの雑談はほぼこのペースで進む。

もちろん全ての会議やインタビューがこのように進む訳ではなく、例えば司会者が流れをコントロールしていたり、経験豊富な俳優と新人、監督と俳優といった力関係がある場合など、もしくはそれほど自己主張の強くない人が集った場合などはもう少しお互いの発言を意識した流れもあるが、上の様な例は生活していてかなり多く出くわす。

それでは日本の場合はどうであろうか。Youtubeで「舞台挨拶」と調べるとこんな感じである:


いろいろな例があるが、基本的には他の人が話しているときはマイクを下げている。回答者を指定していない場合も、人が話しているときは終わるまで聞くという暗黙のルールが成立している。発言が重なる場合もあるが、そのときは相手の発言を尊重しながら話している。

さらにフリートークでもこんな感じで、誰かが話している間に反応はしても、人の話を無視して自分の話をはじめることはほとんどない。

もちろんアメリカのQ&Aと日本の舞台挨拶では少々設定が違うし、欧米でももっと和んだQ&Aもあるし、日本ももっとフリーな感じなトークもある。ただやはり基本的に発言者を尊重する、周りの人に気を配る、和を保つという日本の文化に対し、自分が発言してなんぼという欧米文化との違いはある。

一つ言えることは、欧米で仕事、生活しているとHunger Gamesの例のような発言形式の場には間違いなく出くわす。そしてその場合選択肢としては、こういう場に参加しないか、自分は発言をしないか、こういう場合にも対応できるようになるかである。

そして仕事の上ではミーティングなど避けられない場合もあり、会議においては仮にこういう自己主張の強い人の集った場でもきちんと会議に貢献しなくてはならない。また、海外で生活していて雑談にもっとスムーズに参加できたらと思ったことがある人はいるはずである。

もちろん欧米人になる、欧米かぶれになるのがいいのではなく、日本の文化で育った人は、こういう場で苦労するということを意識しておいた方がよい。そしてそういう場で発言を求められる人や、英語における雑談がうまくなりたい人はやはりそれを習得する必要があるだろう。

最後に、タイミングをつかんだとしてもこのブログで書いているArticulationアドリブに長けていないと、上の例からも分かるようにここの文化では周りのひとは平気で自分の発言をねじ込んでくる。

また、自分の経験上、会話に割り込んでくる場合は、その人は悪意を持っている訳ではなく、さらには意図的にすらやっていない。単純に雑談やヒートアップしたディスカッションの場では、自分の主張をもたもたしているとみな無意識的に自分の話を始めるのがここの文化である。なのでこの発言のタイミングを覚えるのと同時に、説得力のあるArticulatedな話術を身につけるのも大事である。