2014年4月1日火曜日

英語におけるうまい相手のいじり方

ずばりうまい英語の雑談とはのリストのなかの(6)番目、英語で「相手をいじる」というのがどんな感じかがよくわかる例を見つけたので紹介したい。

下のリンクの16:24あたりから、Drogo役のJason Momoaをどうやって見つけたかという話をしている。話しているのはGame of Thronesのshowrunner(テレビドラマの脚本家/責任者)の一人のDavid Benioffなのだが、16:54あたりの彼のJasonに対するいじり方がすばらしい。

まず予備知識として、

-Jasonは今までそれほど有名な俳優じゃなかったこと。
-Baywatchというドラマに出ていたこと。
-Baywatchとはアメリカのドラマで、ライフガードが水着でビーチを走り回っているイメージぐらいしかないような、よく会話の中の冗談で使われるドラマ(Baywatchファンがいたらごめんなさい。Baywatchのサンプルhttp://www.youtube.com/watch?v=Z9UPh7KKyfs)。

それでは本題に。


会話の流れとしてはこんな感じである。

David:「ところで、このタイミングでファンにここで感謝したい」
David:「Drogo役をずっと探していて、どうしても見つからなかった」
David: 「ファンがドラマの役を薦めるメッセージボードがあるんだけど、そこのDrogo役のところをみた」
David:「そのなかでJasonが薦められていて」
David:「すまないけど、そのときJasonのことは名前すら聞いたことがなかった」
(会場が笑う)
Jason: 「いやいや。」
(会場から誰かが何かを叫ぶ。おそらく知らなかったと言われたJasonをサポートするコメント)
Jason: (ありがとうみたいなジュスチャー)

そして次のDavidのコメントが絶妙で、

David: 「(みんながあたかも観ているかのように)そのうえ俺はここんとこBaywatchを観てなかったから("I haven't kept up on my Baywatch, but")」

(会場大爆笑)

Jason:(笑いながら中指をDavidに対して立てる)

この"I haven't kept up on~"というのは、よくみんなの話題のドラマなどを見てないことに対する言い訳で使う。例えばドラマの"24"が流行っていたときに、会話の中で「ああ〜俺"24"ここんところ見てないわ。」みたいな感じに使う表現である。

つまり「あのドラマじゃ観たこと無くてもしょうがないでしょ」と言う代わりに、みんなにいけてないドラマであるという共通認識のBaywatchに出ていたJasonを、あたかも大人気のドラマを語るような表現で皮肉って「悪い、Jason、Baywatchここんとこみてね〜や」、だから知らなかったといじっている訳である。

日本の感覚からしたら捉え方によればBaywatchとそれに出ていたJasonを小馬鹿にしている訳だけど、観客の反応から分かるようにこれぐらいはここでは面白いいじり方に入る。しかもこんな会場で大勢のファンを前にして、showrunnerが発言しているのである。

そして、話のうまいひとは多くがこんな感じのいじりを会話の中で使っている。このDavid Benioffも、そこまでコメディックな人ではなく、基本はshowrunnerとしてまじめな受け答えをする人なのだが、このように所々絶妙なタイミングで笑いを織り交ぜるところに、彼のコミュニケーション力の高さを感じる。

今回は例だけだが、いずれ「英語におけるうまい相手のいじり方」のノウハウも書こうと思う。