2009年1月19日月曜日

ナポレオン・コンプレックス

先日は今年のアカデミー賞視覚効果部門のベークオフだった。
(ベークオフとは、その年の現在ノミネーション候補に
上がっている7作品の中から、ノミネーション3作品を決める
アカデミーの正式な選考会)。

さて、ベークオフの話がしたいのではなく、その会場で友達に
聞いた、こっちのカルチャーを表す面白い英語表現についてで
ある。ベークオフとは、ノミネーション候補の7作品に名前が
挙がっている代表者が、アカデミー会員にその作品の視覚効果
がいかに優れているかというプレゼンテーションをする会で
ある。つまり、そのステージに上がっている人たちは、
各映画の視覚効果全体を総括している大リーダー達である。

そのなかの一人がステージにあがり、堂々とプレゼンテーション
をしているなか、友達の一人が、彼についてぽろりとこんな表現
をした。

友達:「彼って堂々としてるけど、ナポレオン・コンプレックス
    持ってるんだよね。」
自分:「ナポレオン・コンプレックスって?」
友達:「ああ、背が低くて、その分自分を証明しようと肩に力を
    入れている人の事」
自分:「ふ〜ん」

そのステージ上の彼は、自分からみて少なくとも175センチはあった
ように見えた。日本人の感覚からすれば、あのような大舞台で、その
身長で、自分の業界のトップの大リーダーが堂々とスピーチしているの
に対し、「彼は背が小さいから〜」といった冗談を言う事はあまり
ないであろう。

さらには、つい最近、こんな会話を友達とした事がある。

ミーティングにおいて、言葉を発せず、みんなただ座っている
だけでも、その中のリーダは通常すぐに分かるというのである。
それは大抵その部屋の中で、身長が高く、ガタイが大きく、髪の毛が
短く(まじ)、ミーティングの中心位置に座って、堂々としている
ひとであるというのだ。あくまでこれも、この友人の個人的な意見で
あるが、いままで外国で仕事をしてきた中、自分の経験からもその
ときの反応は「うんうん」と同意であった。

もちろん例外は沢山あるが、割合的にはたしかに彼の言っていること
は一理あり、ステレオタイプ(同じ考えや態度や見方が、多くの人に
浸透している状態。wikipediaより)として言われるのはうなずける。

さらにもう一つ面白い例がある、自分の会社で、みんなが誰に
やれと指示されたわけでもないのに、同じタイミングでジムに
通いだすことがある。(というよりは、ジムに通う習慣のない
ひとが、突然ジムに通いだすことがある)。もう想像つくかも
しれないが、会社でリーダー的な仕事をやり始めると突然ジム
に通い始める人が多いのである(笑)。

なにが言いたいかというと、冗談ではなく、現在自分の生活
している環境では、「リーダー」=「背が高く、ガタイの大きい人」
というステレオタイプがある。そして、それに当てはまらないと、
ベイクオフのプレゼンの舞台に立つ人でさえ、ちょっとした
皮肉ったジョークを言われるのである。

もちろん、身長が低いから君はリーダにはできないなどと
いった話は聞いた事が無い(仮に、もしこんな事を実生活で
聞いた事が有る人は、ぜひご一報を。)

しかし、このブログの他の場所でも書いているが、自分の生活
する環境は、リーダーが束ねなくてはいけないのは、自己主張を
どんどんし、上司に肩書きがあろうと、それに見合ったカリスマ性、
威厳、実力がないとついていかないという人たちである。そんな
環境においては、風貌が、リーダーのステレオタイプにあてはまる、
物理的に「大きな」存在であることがプラスの要素である事は
あながち想像できないことではない。

さて、ベイクオフのステージの彼に話を戻す。自分の観点から
話をすると、この「ナポレオン・コンプレックス」を持つ彼は
すごいと思う。海外で仕事をしてきた自分にとって、前出の
外国人の持つ、リーダーに対するステレオタイプは自分にも
現時点であるはずである。そんな自分にとって、ステージ上の
「小さな」彼はまったく小さく見えなかった。初めに書いたが
かれは堂々とし、リーダーとしてのカリスマ性もあり、一言で
言うと「威厳」があった。ミーティングで彼が発言すればみん
なが耳を傾けるであろう。

彼の事を「ナポレオン・コンプレックス」と表現をした自分の
友人は、その大リーダーとしてのステレオタイプに当てはまら
ない彼が、振る舞い方、態度、発言によって、本当の「大きさ」
を体得していることに気づいていただろうか?